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「恐怖は匂う」科学が明かす体臭と感情伝染のミステリー

私たちの日常では気づきにくいことですが、人間の体臭には様々な感情や状態が反映されています。特に「恐怖」や「不安」といった強い感情は、体臭を通じて他者に伝染することが科学的に証明されています。これは映画『パフューム』でも描かれるように、「匂い」が人間の本質や感情を伝える力を持つという事実と深く関連しています。

恐怖の匂い – 科学的根拠

心理状態は体臭に大きな影響を与えることが研究で明らかになっています。例えば、ストレスがかかると肝機能が低下してアンモニアの匂いや硫黄化合物系の匂いが発生することが確認されています。極度の緊張状態、たとえばスカイダイビングをしている人の脇の下からのパッドの匂いを、後で別の人に嗅がせると、恐怖や不安感が「うつる」現象も実験で観察されています。 中高校生が第一線の研究者を訪問「これから研究の話をしよう」 第12回

これは単なる思い込みではなく、具体的な化学物質による情報伝達なのです。恐怖や不安などの強い感情を感じたとき、人間の汗や体臭には特殊な化学物質(シグナル物質)が含まれます。研究者たちはこれを「ケモシグナル」とも呼んでおり、齧歯類(ねずみ類)に恐怖反応を引き起こす匂い物質「2-methyl-2-thiazoline(2MT)」を使った実験によって、恐怖反応に伴う体温低下の神経メカニズムまで解明されつつあります。 匂い物質による恐怖反応に伴う体温低下の神経メカニズム (医学のあゆみ 277巻3号) | 医書.jp

感情伝染のメカニズム

五感の中でも「嗅覚」は特別な位置づけを持っています。他の感覚と異なり、匂いの情報は脳の大脳辺縁系に直接伝わるため、本能的・無意識的な反応を引き起こしやすいのです。これはストレスや感情の伝達において重要な役割を果たしています。 匂いと脳のストレス応答 | 生物学科 | 東邦大学

恐怖や不安を感じている人から放出される化学物質を含んだ体臭を嗅ぐと、以下のような現象が起こります:

  1. 感情認識の変化:他者の曖昧な表情を見た際に「恐怖」の感情を読み取りやすくなる
  2. 生理的反応:自分自身の警戒心や緊張状態が高まる
  3. 行動変化:より慎重になり、リスク回避的な行動を取るようになる

これは人間が社会的生物として進化する中で、集団で危険を察知し生存確率を高めるための生物学的メカニズムと考えられています。人間の鼻に入った匂い分子は鼻腔上部の嗅粘膜にある嗅細胞で捉えられ、電気信号に変換されて脳に伝えられます。 Jst

嗅覚と脳の関係

嗅覚情報が脳内でどのように処理されるかも解明されつつあります。匂いの情報は嗅細胞から脳に送られた後、過去の記憶と関連付けて「何の匂いか」を特定する海馬、「快い匂いか不快な匂いか」を判断する扁桃体、ホルモン分泌に関わる視床下部に伝わります。そのため嗅覚は他の感覚と比べ、より短時間で大脳辺縁系に情報が送られ、本能的・無意識的な反応を引き起こしやすいのです。 かぐわしき、この世界~匂いをコントロールし、みんなが心地よい環境をデザインする~ | Science Portal – 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」

最近の研究では、ドーパミン細胞が匂いの価値(好き嫌い)を符号化し、動物が匂いを嗅ぐ経験を積むごとにその価値を更新することも発見されました。これは匂いによる感情伝染の神経科学的基盤の一部を説明するものかもしれません。 ドーパミン細胞が匂いの価値を表現し更新する機構を解明 | 理化学研究所

感情の匂いによる伝達例

恐怖や不安だけでなく、幅広い感情が体臭を通じて伝わることがわかっています。

  • 恐怖/不安の伝染:ストレス状態の人の汗を嗅ぐと、他者も不安や緊張状態が高まる
  • 幸福感の伝染:陽気な気分の人の汗を嗅いだグループは、実際に気分が明るくなる
  • 性別による差異:女性は特に男性の「不安」を示す匂いに敏感で、そうした匂いを嗅ぐとリスク回避的になり、信頼感が下がる傾向がある

映画『パフューム』との関係

いつも生徒さんに長編ですが一度は見てとおすすめしている映画『パフューム ある人殺しの物語』では、「匂いが人間に与える影響」という大きなテーマが扱われています。映像によって「匂い」や「臭い」が表現され、視覚から嗅覚を刺激するような演出が施されています。

この映画は18世紀のフランス・パリを舞台に、超人的な嗅覚を持つ香水調合師が究極の香水を生み出すために犯したタブーを描いている作品です。ベン・ウィショーが演じる主人公ジャン=バティスト・グルヌイユは、生まれながらにして数キロ先の匂いをも感じ取れるほどの超人的な嗅覚を持っていました。 パフューム ある人殺しの物語 – Wikipedia

物語の根幹には「匂いは人間の本質や感情を伝える力がある」というテーマがあり、これは実際の科学的知見ともリンクしています。主人公グルヌイユは、究極の香水を作るために「人間の体臭=本質的な匂い」を追い求めます。

物語のクライマックスでは、彼の作った「究極の香水」が人々に驚くべき影響を与え、その香りを嗅いだ人々の感情や行動が劇的に変化します。これは匂いが人間の本能や感情に強く訴えかけるという科学的事実を誇張した表現と言えるでしょう。

日常生活における匂いの影響

私たちの日常生活においても、匂いは想像以上に大きな影響を与えています。

  • 信頼形成:無意識のうちに相手の体臭を嗅ぎ、親近感や信頼感を形成する根拠としている
  • 危険察知:見知らぬ人や場所の匂いに対する警戒心は、古くからの生存本能の名残り
  • 記憶との結びつき:匂いは記憶と強く結びつき、特定の香りで過去の感情体験が鮮明によみがえる

このような匂いの影響力は、消費者行動の研究でも注目されています。匂いは人間の記憶、感情、行動に大きく影響し、適切な香りを用いることで無意識的に人々の行動を変化させることができるとされています。 消費者行動における匂いの効果研究の展望

まとめ:ごまかせない「本当の情報」としての匂い

恐怖や不安を感じたとき、人間の汗や体臭には特有の化学物質が含まれ、それを嗅いだ他人も無意識に警戒モードになります。これは「恐怖の伝染」という現象であり、集団の生存本能と密接に関わっています。

映画『パフューム』が描いたように、匂いは人間の本質や感情を伝える強力な媒体です。他の感覚と異なり、嗅覚は直接大脳辺縁系に働きかけるため、理性でコントロールしにくい本能的な反応を引き起こします。

これらの科学的知見は、匂いがコミュニケーションや感情伝達において、ごまかせない「本当の情報」として機能していることを示しています。私たちの体臭は、言葉や表情とは別の次元で、自分の内面や感情状態を他者に伝えているのです。

匂いを通じた感情伝染の研究は、人間の社会的相互作用や心理的プロセスへの理解を深め、将来的には不安障害やPTSDなどの治療法開発にも貢献する可能性を秘めています。

瓜田綾子

アヤアルケミスト株式会社 代表取締役 AEAJ総合資格認定スクール アヤ アルケミック スタジオ校長 AEAJ全資格を所持 経歴: 1969年生まれ。音楽演奏者、エステティシャンを経て、2007年よりアロマテラピーの道へ。出産を機にアロマテラピーの効果を実感し、2009年にアヤアルケミスト株式会社を設立。アロマテラピーの普及と教育に尽力。主な資格: - (公社)日本アロマ環境協会認定アロマセラピスト - (公社)日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクター - (一社)和ハーブ協会認定和ハーブインストラクター - 米国ハワイ州ホリスティックケアリング協会認定リンパドレナージュトレーナー実績: - 2010年(公社)日本アロマ環境協会総合資格認定校として承認 - 2016年〜2019年 藤沢市民病院でのアロマボランティア活動およびアロマトリートメントケアサロン運営 - 2018年 第19回湘南ビジネスコンテストにて来場者賞、なでしこ起業家賞をW受賞 - 慶應義塾大学SFC研究所との共同研究実施現在の活動: - アヤアルケミックスタジオにて、アロマテラピーインストラクター、アロマセラピスト育成 - 湘南和ハーブの会運営 - 荏原湘南スポーツセンターでのスポーツアロマサロン運営 - 慶應義塾大学SFC研究所所員として研究活動 - 湘南思春期クリニックと連携し、不登校の子供たちとその保護者向けのアロマケア提供(2024年夏〜予定)理念: "アロマテラピーを通じて、人々の心と身体の健康と美しさを引き出し、Quality of Life(生活の質)の向上に貢献する"という理念のもと、安全で質の高いアロマテラピー教育と実践を提供。医療分野との連携や研究活動を通じて、アロマテラピーの可能性を追求し続けています。瓜田綾子は、アロマテラピーの専門家として、教育、研究、実践の場で幅広く活躍。その経験と知識を活かし、心と体の健康づくりに貢献しています。

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